「今だけ50%OFF!」
「残りわずか!」
「あと○人がこの商品を見ています」
ネットショップやWebサービスを利用していて、このような表示を見たことはないでしょうか。
もちろん、こうした表現のすべてに問題があるわけではありません。
しかし、Webサイトのデザインや表示方法を使って、ユーザーが本来望んでいない選択へと誘導する仕組みは「ダークパターン」と呼ばれ、国内外で問題になっています。
実際、消費者庁も2025年に国内Webサイトを対象としたダークパターンの実態調査を公表し、さらに2026年6月には消費者を対象とした意識調査を公表しました。
WebサイトやECサイトを運営している事業者にとっても、「知らず知らずのうちにダークパターンに近い表現を使っていないか」は、一度確認しておきたいポイントです。
この記事では、
・ダークパターンとは何か
・どのような表示がダークパターンになるのか
・なぜ問題になっているのか
・日本ではどのような状況なのか
・Webサイトを運営する事業者が気をつけること
について、Webに詳しくない方にもわかりやすく解説します。
ダークパターンとは?

ダークパターンとは、Webサイトやアプリなどの画面設計によって、ユーザーを特定の行動へ誘導したり、本来は望んでいない選択をさせたりする手法のことです。
OECD(経済協力開発機構)は、ダークパターンについて、オンライン上のユーザーインターフェースなどで消費者を誘導・欺瞞・強制・操作し、消費者自身にとって最善ではない選択をさせるような手法として整理しています。
たとえば、
「無料だと思って登録したら有料プランに加入していた」
「登録は簡単だったのに、解約方法がなかなか見つからない」
「必要のないオプションが最初から選択されていた」
といったケースです。
ポイントは、単に「デザインがわかりにくい」というだけではありません。
事業者側に有利な選択へユーザーを誘導するような設計になっていることが、ダークパターンの大きな特徴です。
ダークパターンは意外と身近にある
ダークパターンという言葉自体を知らなくても、実際には見たことがある人は少なくありません。
消費者庁が2026年6月に公表した「Webページ等におけるいわゆるダークパターンに対する消費者意識調査」では、76.2%の人がダークパターンを見たことがあると回答しています。
また、過去1年間に何らかのダークパターンを経験した人は37.5%でした。
つまり、ダークパターンは一部の悪質なサイトだけの話ではなく、私たちが普段利用しているWebサイトやアプリにも関係する身近な問題になっています。
よくあるダークパターンの例
では、実際にどのようなものがダークパターンに当たるのでしょうか。
代表的な例を見てみましょう。

1.解約方法をわかりにくくする
代表的なのが、サービスへの登録は簡単なのに、解約しようとすると手続きが極端に難しくなるケースです。
たとえば、
・登録はWeb上で数クリックで完了する
・解約ページがどこにあるかわからない
・何ページも移動しなければ解約できない
・何度も「本当に解約しますか?」と確認される
・Webから登録できるのに解約は電話のみ
などです。
「登録は簡単、解約は難しい」という設計によって、ユーザーがサービスをやめることを意図的に難しくしてしまいます。
2.最初から選択された状態にする
購入画面などで、
「メールマガジンを受け取る」
「有料オプションを追加する」
「関連サービスに申し込む」
といった項目に、最初からチェックが入っているケースです。
ユーザーが気づかずそのまま進んでしまえば、本来選ぶつもりのなかったサービスまで申し込んでしまう可能性があります。
「選択してもらう」のではなく、「選択された状態から外してもらう」設計になっている点がポイントです。
3.「残りわずか」などで必要以上に焦らせる
「残り1点!」
「あと5分でセール終了!」
「現在20人がこの商品を見ています」
こうした表示もよく見かけます。
もちろん、本当に在庫が残り1点だったり、実際にセールが終了したりするのであれば、情報を伝えること自体が直ちにダークパターンになるわけではありません。
問題になるのは、実態と異なる情報や誤解を招く表示によって、「今買わないと損をする」とユーザーを焦らせ、判断を急がせるケースです。
4.断るボタンだけ目立たなくする
Cookieの同意画面などで、
【すべて同意する】
というボタンは大きく目立っているのに、
「拒否する」
という選択肢だけ文字が小さかったり、薄い色になっていたりすることがあります。
選択肢自体は用意されていても、一方だけを極端に目立たせることで、ユーザーの選択を誘導しているわけです。
EUのデジタルサービス法(DSA)でも、選択肢を非中立的に提示し、特定の選択肢を視覚的・聴覚的に目立たせるような設計が問題となり得ることが示されています。
5.追加料金が最後になって表示される
最初は、「3,000円」と表示されていた商品が、購入手続きを進めていくと、
手数料
オプション料金
サービス利用料
などが追加され、最終的には5,000円になっていた。
このように、購入判断に重要な情報を最初には見せず、手続きを進めた後で追加費用を表示する方法も注意が必要です。
ユーザーはすでに購入手続きを進めているため、「ここまで入力したから、このまま買おう」と判断しやすくなります。
6.何度も同じ選択を求める
「通知をONにしませんか?」
「メールを受け取りませんか?」
「有料プランに変更しませんか?」
一度断っているにもかかわらず、何度も同じ選択を求められるケースです。
1回の提案であれば通常のマーケティングでも、ユーザーが断っているにもかかわらず繰り返し表示し、最終的に承諾させようとする設計は問題になる可能性があります。
「売れるデザイン」と「ダークパターン」は何が違う?

Webマーケティングでは、
・目立つCTAボタンを設置する
・申込みまでの導線を短くする
・期間限定キャンペーンを行う
・購入者の口コミを掲載する
・おすすめの商品を目立たせる
といった施策は一般的に行われています。
では、こうした施策とダークパターンは何が違うのでしょうか。
重要なのは、「ユーザーの意思決定を助けているか、それとも歪めているか」という視点です。
たとえば、本当に9月30日までのキャンペーンであれば、
「9月30日まで」
と大きく表示することは、ユーザーに必要な情報を伝えていると考えられます。
一方、アクセスするたびに「あと10分」と表示され、10分後にアクセスしても再びカウントダウンが始まるのであれば、実際には存在しない緊急性を作り出している可能性があります。
ユーザーに行動してもらうこと自体が悪いわけではありません。
正しい情報をわかりやすく伝え、そのうえでユーザー自身が判断できる状態を作ることが大切です。
なぜ今、ダークパターンが注目されているのか?
背景には、買い物や契約のオンライン化があります。
ECサイト、サブスクリプション、アプリ、SNSなど、私たちは日常的に画面上のボタンや選択肢を見て意思決定をしています。
Webサイトの設計次第で、人の行動に大きな影響を与えられるようになりました。
OECDもダークパターンによって、金銭的損失、プライバシーへの影響、心理的な不利益などが生じる可能性を指摘しています。
また、EUではDigital Services Act(DSA:デジタルサービス法)によって、対象となるオンラインプラットフォームにおけるダークパターンが明確に規制されています。
日本でも消費者庁が2025年に国内Webサイトにおけるダークパターンの実態調査を公表し、2026年には消費者意識調査を実施するなど、調査が進められています。
日本ではダークパターンは違法なの?

ここは少し注意が必要です。
2026年時点で、日本では「ダークパターン」という名称ですべてを一律に禁止する法律が存在する、という単純な状況ではありません。
消費者庁も、ダークパターンについて法令上などで明確な定義がなく、多種多様であるため確定的・完全な分類が難しいと説明しています。
だからといって、「ダークパターンを使っても問題ない」という意味ではありません。
具体的な表示や販売方法によっては、景品表示法、特定商取引法、個人情報保護に関するルールなど、既存の法令・制度との関係が問題になる可能性があります。
そのため、「ダークパターンという法律があるかどうか」ではなく、ユーザーに誤解を与える表示になっていないか、自由な意思決定を妨げていないかという視点で考えることが重要です。
ダークパターンは短期的には売上が上がっても、長期的には逆効果になる可能性も
ダークパターンを使えば、一時的には申込みや購入を増やせるかもしれません。
しかし、
「知らないうちに申し込んでいた」
「解約できなくて困った」
「思っていた金額と違った」
と感じたユーザーは、その企業やサービスにどのような印象を持つでしょうか。
Webサイトで重要なのは、単純に「クリックさせること」ではありません。
その先で商品やサービスに満足してもらい、継続して利用してもらったり、他の人に紹介してもらったりすることまで考える必要があります。
短期的なコンバージョンだけを追いかけるのではなく、
「ユーザーが納得して選択できるWebサイトになっているか」
を見ることが、これからさらに重要になってくるでしょう。
Webサイト運営者がチェックしておきたいポイント
自社サイトやECサイトを運営している場合は、一度次のようなポイントを確認してみてください。
・料金や追加費用がわかりやすく表示されているか
・申込み条件がわかりやすいか
・解約方法を必要以上に複雑にしていないか
・不要なオプションが最初から選択されていないか
・「残り○個」などの表示は事実に基づいているか
・ユーザーを焦らせる表現を必要以上に使っていないか
・同意する選択肢だけを極端に目立たせていないか
・断ったユーザーに何度も同じ選択を求めていないか
・購入や申込みの直前に重要な条件を初めて表示していないか
制作会社やマーケティング担当者から提案された施策であっても、「コンバージョンが上がるから」という理由だけで採用するのではなく、ユーザー側から見てどう感じるかを確認することが大切です。

Webマーケティングで大切なのは「誘導」ではなく「選びやすくすること」
Webマーケティングでは、ユーザーに行動してもらうための工夫が必要です。
ボタンを目立たせたり、サービスのメリットを伝えたり、申込みまでの手間を減らしたりすること自体に問題があるわけではありません。
むしろ、わかりにくいサイトをわかりやすくすることは、ユーザーにとっても事業者にとってもメリットがあります。
大切なのは、「ユーザーを無理に動かす」のではなく、「ユーザーが納得して選べる状態を作る」ということです。
ホームページは、単に商品やサービスを売るためだけのものではありません。
会社やサービスを知ってもらい、「ここなら安心して相談できそう」と感じてもらうための場所でもあります。
短期的な数字だけではなく、ユーザーとの信頼関係まで考えたWebサイトづくりが、これからますます重要になってくるのではないでしょうか。
まとめ
ダークパターンとは、Webサイトやアプリのデザイン・表示方法を利用して、ユーザーが本来望んでいない選択へ誘導する手法のことです。
代表的なものとして、
・解約方法をわかりにくくする
・オプションをあらかじめ選択しておく
・実態と異なる「残りわずか」などで焦らせる
・特定のボタンだけを目立たせる
・追加料金を後から表示する
・断っても何度も同じ選択を求める
などがあります。
Webマーケティングでは「どうすれば申し込んでもらえるか」を考えることも大切ですが、それ以上に「ユーザーが納得したうえで申し込めるか」という視点が重要です。
自社のホームページについて、
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「ユーザー目線で一度サイトを見てほしい」
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